良品計画の海外連結子会社であるMUJI U.S.A. Limited(以下、MUJI USA)は、現地時間2020年7月10日付でデラウェア州連邦破産裁判所にチャプター11(米国連邦倒産法第11章)に基づく再生手続を申請した。
MUJI USAは、2006 年に米国で「無印良品」事業を開始し、18 店舗を展開していた。
同事業は高い賃料など高コスト構造のため継続的に損失が発生しており、顧客層拡大による売上向上の取り組みや賃料改定交渉など、事業再建のための取り組みを行っていた。同社の2020年2月期決算資料では2020年の状況について下記の通り説明されていた。
USAでは18年度以降に新規出店した大型店が苦戦。
5月の再建計画開始後も北米事業として赤字が継続となるも、下期については再建計画通り販管費を抑制し、4Qでは赤字幅が縮小
こうした再建の推進途上で新型コロナウイルス(COVID-19)感染症が拡大し、米国で展開する全店の営業停止を余儀なくされた。売上の大幅減少による採算が悪化し、この先も、当面は市場環境は不透明な状況が継続することから、チャプター11 に基づく再生手続を申請することとなった。
なお、現行事業はこれまで通り継続する予定となっている。
負債総額は 6400万USドル(2020 年 3 月 31 日現在)だが、うち 5300万USドルは日本法人に対する債務となる。
直近3年間の業績は下記の通り(同社プレスリリースより)
MUJI USAはミニマニストのためのブランドとして、家庭用品、美容関連、アパレル関連の商品に人気があった。ニューヨークのブルックリンに7,300平方フィートの店舗をオープンした際には現地でも話題になっていた。(参考記事:「Muji opens in Brooklyn, NY with plans to double US store base」)
ニューヨークタイムズのMike Albo記者はMUJI USAの商品を”gloriously affordable”(見事なお手頃価格)と称していた(参考記事:「The Civilized World Finds a Refuge」)
ジェフリーズのアナリスト、マイケル・ジョン・アレン氏は良品計画を高く評価している。
「新型コロナ危機を経て、これまで以上に成長することを確信している」とコメントし、同社のブランド小売業者のトップに選んだ。(参考記事「Choose Muji Ahead of Uniqlo in Post-Covid World, Jefferies Says」https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-05-26/choose-muji-ahead-of-uniqlo-in-post-covid-world-jefferies-says)。同レポートの中で、ユニクロについては新型コロナ第2波が起こった時に「不測の事態が起こりやすく、もし起これば大きく株価が下落する会社」と評している。また、ニトリについては、「パンデミックを通じて株価が上昇したが、その強さは持続不可能だろう」としており、ユニクロやニトリに比べて良品計画を高く評価していることが分かる。
今後、同社は再建計画を推進する。
これまでの再建計画の進捗状況を見ると、2019年に店舗の引き下げを模索したが、「家主との交渉で全く折り合えなかった」(松崎社長 日経電子版記事より)とのこと。
家賃の他にも、サイズなどを現地仕様に合わせた商品づくりや中国工場からの輸送コストなど、解決すべき課題は多い。